中央構造線安康露頭
長野県天然記念物
map
Last update 2009/06/17
大鹿村中心部から地蔵峠に向って国道を行くと、峠の登りにかかる直前に橋があり、国道沿いの東側(峠に向かって左側)に「露頭入口」の標識があります。もし入口を行き過ぎたときは、ゲートが閉じた林道分岐点があるので、引き返して最初の橋が露頭入口です。
駐車場はありませんが路肩に車を停めてください。
沢ぞいの崖上に歩き道を作ってあります。2分ほど下ると、青木川の向こう岸に露頭が出ています。
2006年7月の大雨で河床が上がり,露頭の下半分が埋没しました。露頭面はその後のクリーニングできれいに見えるようになっています。
また,安康沢の合流点が青木川を流れ下ってきた大量の礫で埋り,安康沢の流路が変わりました。現在の流路は1961年の伊那谷集中豪雨以前に書かれたと思われる地形図に示された流路とほぼ同じ位置に戻っています。そのため露頭への歩道は新しい流路で切られていますが,簡単に渡れますので,そのまま青木川の左岸へ進んでください。
2007/06/27撮影(河床上昇後)
ワイド画像(700kB)
2004/04/05撮影(河床上昇前)
ワイド画像(1.12MB)
安康(あんこう)露頭では、赤石時階の断層粘土帯が2列あります。
外帯から内帯へのし上げる低角の衝上断層群もよく見えます。
露頭の解釈
領家変成帯のカタクレーサイト
領家変成帯側の淡褐色部分は、花崗岩類起源のポーフィロクラスティック・マイロナイトを原岩とするカタクレーサイトです(AN02)。暗色縞状のカタクレーサイト(AN02、05,06)については原岩や変形履歴が分かっていません。脆性剪断による縞状の変質と思われますが、マイロナイト化の履歴を持たない変成岩起源のカタクレーサイトが取り込まれている可能性もあります。
三波川変成帯のカタクレーサイト
三波川変成帯側は、緑色片岩や緑色岩が原岩のカタクレーサイトです(AN08、10,11)。
新第三紀中新世の赤石時階の断層ガウジ帯
安康露頭では、2列の暗色の断層ガウジ帯が見られます(F2)。
この露頭の断層ガウジからは年代は得られていませんが、高遠〜鹿塩の中央構造線や静岡県の赤石構造線の断層ガウジ帯の2μm以下の細粒物質から、1200万年〜2700万年前のカリウム−アルゴン年代が得られています。これらの年代は、日本海の拡大にともなう西南日本の時計まわり回転、伊豆弧との衝突による西南日本の「ハ」の字屈曲、赤石構造帯の形成と水窪以北の中央構造線と連動した左横ずれ運動の年代(赤石時階)、およびそれに引き続くマグマ活動の年代を示します。
(この年代値は、温度上昇により結晶中のアルゴン40が失われた年代であり、断層運動にともなう摩擦熱や熱水循環が生じたことを示します。しかしアルゴン40が失われるほどの温度上昇にならなければ年代のリセットは生じないので、この年代以後の断層運動を否定するものではありません。)
地質境界としての中央構造線
現在見られる地質境界は、赤石時階の活動により大きく改変された姿です。この露頭では、現在の地質境界は、2列の断層ガウジ帯(F2)のうち、東側(右側)のガウジ帯の右縁付近にあると考えていますが、破砕された原岩の変質が激しく、まだ確信が持てません。
小規模低角逆断層群
東から西へ低角度でのし上げた多数の小規模な逆断層が見られます(F3系)。これらは赤石時階の暗色ガウジ帯を切っており、東西圧縮場に変わったことを示しています。
南岸の路頭
安康露頭では、手前側の岸と安康沢沿いにも岩石が露出しています。手前側の岸の露頭(ワイド画像の右端)と対岸の露頭を対比すると、中央構造線の走向が得られる“はず”です。
安康沢を上流へたどると、国道の橋との間に、緑色と黒色のガウジ帯があります。平面図(松島1993原図)では、肉眼での露頭観察から、三波川変成帯の岩石を原岩とする断層ガウジが挟み込まれたものという解釈をしています。この部分の原岩、構造、変形履歴も未解決です。