下青木城の腰露頭

博物館から歩いて行ける小露頭
map

国道152号を博物館入口(小渋橋南詰)から上村方面へ約1000m進むと,国道左側に露頭入口の木製看板があります。

博物館周辺マップ

博物館岩石園から南に見える下青木断層鞍部の直下で、地主の木下良明さんが露頭を掘り出しました。

下青木断層鞍部と城の腰露頭

博物館から南へ750mの位置にある下青木の中央構造線断層鞍部。
露頭は小規模だが、断層鞍部地形と断層との関係がセットで分かる貴重な露頭。

鞍部(あんぶ):山地の尾根または二つの峰の間にあるくぼみ(凹地)。このくぼみが、交通路に利用されているものを峠(pass)という。・・・有井琢磨(二宮書店『地形学辞典』1981)

断層鞍部(fault suddle)=ケルンコル(kerncol):断層線に沿って生じた鞍部。1904年、Lawson,C.A.によりカリフォルニア州のカーン(Kern)谷にみられるこの種の地形に対して命名された。この鞍部の成因には、断層運動そのものに基づく場合と、断層線に沿う破砕された岩石での差別侵食による場合とがある。欧米ではケルンコルの語はほとんど使用されていない。・・・太田陽子(二宮書店『地形学辞典』1981)

ケルンバット(kernbut):断層鞍部で山地の本体と隔てられている分離丘陵。ケルンコルと同じくLawson,C.A.(1904)によりカリフォルニア州のカーン(Kern)谷沿いの地形からこのように命名されたが、欧米では述語として現在使用されていない。その配列は、断層の位置の認定や、断層面の傾き、変位の向きなどを知るうえで重要な指標となる。しかし、この種の地形は、差別侵食によってできる場合も多いから、かならずしも活断層認定の指標とはならないことに注意する必要がある。・・・太田陽子(二宮書店『地形学辞典』1981)

博物館から城の腰露頭への道順

淡緑色:山地、褐色:地すべり跡地・扇状地・崖錐、黄色:道路
国道152号線を上村方面へ進んでください

露頭入口

国道から露頭への入口。路肩に車を置き、小道を上る。
小道を上がっていくと右側(西側)に領家帯のカタクレーサイト(破砕岩)が露出している。

緑色岩の巨大転石

屋敷を過ぎてすぐに道が分かれる。右手に上がると露頭へ。まっすぐ進むと巨大な緑色岩の転石がある。
この巨大転石は、岩石の種類から赤石山脈側の石であることは確かだが、どこから滑ってきたのか明らかになっていない。
明治時代に、夜半に大音響を発して2つに割れたという。写真に写っているのは、その片割れ。左の写真上方の逆L字型の割れ目を上から見たのが右の写真。割れ目の水平部分に落葉が積もっているが、小規模な宴会ができる程の大きさ。

緑色岩巨大転石の偏光顕微鏡写真

画像をクリックすると、拡大画像と説明が出ます
×10,下方ポーラー 同左,クロスポーラー
×25,下方ポーラー 同左,クロスポーラー

三波川帯上部のみかぶ緑色岩体中のドレライト(玄武岩質半深成岩)ないし細粒の斑れい岩。
みかぶ緑色岩体は、中生代三畳紀〜ジュラ紀に南方の古太平洋底に噴出した巨大な溶岩台地で、海洋プレートの北上によりジュラ紀〜白亜紀に古アジア大陸に付加したと考えられている。

中央構造線(地質境界)断層露頭

露頭は、保護のためビニールシートで覆ってありますが、どうぞまくり上げてごらんください。図と次の説明は伊那史学会『伊那』2002年8月号に掲載したものです。

まず露頭に向かって中央上部から左下にかけて、幅10センチメートル程度の白色の粘土質の帯が目立ちます。その左上側に沿って淡緑色の粘土があり、白色の帯から漸移しているように見えます。淡禄色部には濃緑色の微細な岩片が含まれていますが、これは蛇紋岩の岩片です。淡緑色の粘土は蛇紋岩が粘土化したものです。してみると、白色の帯も柁紋岩に含まれていた鉱物が濃集したものである可能性があります。観察会のときの議論では、タルク(滑右)が候補に挙げられていました。露頭の左側面に見えているのは蛇紋岩です。

露頭の中央下部から右下部にかけて、領家帯の変成岩を原岩とする片状力タクレーサイトが露出しています。地表に近い部分は、風化して赤褐色になっています。白色の帯の右下の、幅30〜50センチメートルの帯状の部分は、粉砕された岩片になっています。領家帯の片状カタクレーサイト岩片の間も、粉砕岩片が埋めています。このような未固結の断層内物質を断層ガウジといいます。カタクレーサイト岩片は分断され回転しています。

三波川帯側は、淡緑色粘土の上方の地表近くに、黄色と黒色の蛇紋岩片も見えます。この岩片は粘土に囲まれた“根無し”で、斜面に沿って滑ってきたと思われます。三波川帯側の地表付近は、断層運動とは無関係な地すべり性の滑動で、かなり動いているようです。

白色の帯の下側のガウジ帯で、物質的には三波川帯と領家帯に別れるようです。断層面は、もともと高角度に立っていたものが、地すべり性の滑動によって寝てしまった可能性が高いと思われます。

蛇紋岩(serprentinite):蛇紋石を主成分とする岩石で、通常、多少の磁鉄鋼・クロム鉄鋼などを含む。肉眼で黒〜暗緑色を呈し、炭酸塩の細かい網状脈を伴うことがある。かんらん岩が水と反応して生成され、約600℃以下の温度条件で、Mgに富んだかんらん石・輝石が熱水による変質作用や広域変成作用により蛇紋石に変化してできる。断裂帯や沈み込み帯などのプレート境界部に大量に出現する。・・・松久幸敬・前川寛和・平野秀雄(平凡社『新版地学事典』1996)

カタクラスチック(cataclasitic):比較的低温低圧条件下の地殻浅所において岩石に応力が加わり、脆性破断を生じたもの。機械的な変形機構で特徴づけられる。・・・小島丈児・高木秀雄(平凡社『新版地学事典』1996)

カタクレーサイト(cataclasite):カタクラスチック組織で特徴づけられ、再結晶をほとんど伴わない固結した断層岩。破砕岩とも。肉眼的に認定できる面構造をもつものは、葉片状カタクレーサイト(foliated cataclasite)と呼ばれている。・・・高木秀雄(平凡社『新版地学事典』1996)

断層ガウジ(fault gouge):断層運動に伴う破砕によって生じた細粒・未固結の断層内物質。M.W.Higgins(1973)やR.H.Sibson(1977)、の断層岩類の分類によると、破砕岩片が細粒基質部に対して30%未満のもの。それ以上のものは断層角礫(fault breccia)と呼ばれる。断層粘土とも呼ばれ、熱水変質を伴って粘土鉱物を生じていることが多いが、粘土鉱物を伴わない場合もある。しばしば標本スケールで顕著な縞状構造を示すことがあり、そのようなものは葉片状断層ガウジ(foliated fault gouge)と呼ばれる。・・・高木秀雄(平凡社『新版地学事典』1996)

⇒インターネット展示室“断層岩”

露頭整備と観察会

城の腰露頭は、2000年と2001年の「露頭さがし」観察会で位置が明らかにされ、2001年冬に木下さんが機械を雇って掘り下げ、2002年の「露頭さがし」観察会でクリーニング整備したものです。写真は、2002年5月12日のクリーニングの後、露頭の観察を行っているところです。

中央構造線露頭さがし

1999年7月25日の「露頭さがし」観察会。
上青木深ヶ沢(しんがさわ)断層鞍部南側、寺社沢(じしゃさわ)上流側で露頭発見!
左写真:クリーニング風景
右写真:クリーニングされた露頭。この露頭は、ガウジ帯の幅が4メートルもある。